ある建築家に手紙を送った。
その建築家が求めているのは、時間や関係や状態といった、かたちではないものである。
同時にその建築家は、「具体的な寸法・材質・構造・色をもった、目に見えるかたちをつかって表現しなければ、建築をつくれない」ことをよく知っている。
ほどなくしてその建築家からポストカードが届いた。
ポストカードに描かれていたのは、19世紀後半から20世紀初頭のデンマークの画家、ヴィルヘルム・ハンマースホイによる風景画であった。
偶然にも私は彼の描く人のいない風景画と室内画、そして彼の妹と妻の肖像画に強く惹かれていた。初めてハンマースホイの絵を見たとき、彼のまなざしを、そのままこの身に引き受けたいとさえ思った。
私はすぐにその建築家へハンマースホイの室内画が描かれたポストカードを送った。
私はその建築家と画家のことが、また好きになった。