2010/12/30

ルイス・バラガン

建築―私は「感情的建築」というものを信じています。人間にとって、建築がその美しさによって心を動かすものであるということが非常に大事なのです。

私の家は、私の心の避難所です。冷ややかで、合理的なだけではない、心を揺り動かす建築なのです。

私にとって、庭を造ることは、建築的なアカデミズムから解放されるという喜びでした。というのも、庭を造ることにおいては、想像力を用いることができるからです。それは、雰囲気に魔法をかけるためのたえまない想像力です。またそれは、感情に関わるものです。

2010/12/20

東京女子大学チャペル

屋久島の家

高木正勝

目前にある画をしっかり観るでもなく、うっすら目を細めて見ると、画がぼやける。掴めそうで掴めない、在りそうで無さそうな動きや色を見届け、それらを丁寧に写し取る。この単純な作業の連続が映像を作るという行為である。

目も窓も空気も霞む冬の朝

大掃除

12月に入ってから、少しずつ自分の部屋の大掃除を始めていた。大掃除といっても、作業の大半は部屋にある本を選別するという作業である。大学を卒業して実家に戻り、元々妹が使用していた部屋に移ることになった私は、本に囲まれるような部屋を作り楽しんでいた。しかしその後社会人になり、日々疲れた体で床につき、朝日の差さないうちに家を出る生活が始まると、私の中の何かが確実に摩耗していくのを感じるようになった。
朝起きて、目の前に広がる本棚を眺めても、あの頃の興奮が蘇って来ないのである。
学生時代に私が築いてきたものと、社会で向き合っているものに、何か圧倒的な断絶を感じたのである。
この断絶に橋を架ける為に私は、本当に必要な本だけに囲まれなければいけないと直感した。
整理して私の本は最終的に全体の四分の一ほどになった。
部屋が軽くなるにつれて、次第に心も軽くなっていったが、部屋に置かれているその他のモノまで移動させたせいで、時々仕事の荷物の忘れ物をしてしまうという代償を負ってしまった。
モノに振り回される生活は、もうしばらく続きそうである。

2010/11/03

ジャック・マイヨール

「海底はつらい。上がってくる理由が見つからないから。」
_____「グラン・ブルー」より

2010/10/24

ジャン=ジャック・ベネックス

ベティ、すべてを君にあげよう。城壁から岩の向こうまで続く大地を。それにあの小さな家も。
______「べディ・ブルー」より

2010/07/31

河童土器屋

「触媒」(吉村冬彦著)

鴨長明

行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず
_____「方丈記」より

カッパドキア

一級建築士試験を終えた私は、試験会場であった静岡県立大学を後にし、JR草薙駅へ向けて歩いていた。
小高い丘を下り、交差点に差し掛かった時、ふと目の前に「河童土器屋」と書かれた変わった看板が現れた。
もしやと思い、行きとは違うその「河童土器屋」がある道へ方向を変え、その店のドアを開けると、そこにはトルコの古い集落である「カッパドキア」の写真が飾られていた。
その店のオーナーは思わずニヤリとした私の顔に気づき、私はその女性へコーヒーを注文する。
「河童土器屋(カッパドキア)」は喫茶店であったのだ。
「カッパドキア」がきっかけとなりオーナーである女性と会話すると、そのオーナーと旦那さんは、実は一度もそこへ訪れたことがないのがわかった。
「学生の頃は主人とカッパドキアに行ってみたいと語っていたけれど、お金が無くて行けなかったの。そしていつのまにか主人とこの店を始めて、お金を貯めることはできたけど、今度は忙しくて結局この歳まで行けずじまいなのよ。だからここに飾られているカッパドキアの写真や置物は、全てお客さんが旅行に行ってプレゼントしてくれたものなの。」
おそらく、この夫婦に纏わりついているものを、「不条理」と呼ぶのだろう。
問題は、この「不条理」が一体悲劇なのか、喜劇なのか、私には全く解らないことである。