2017/01/29

冬うらら

冬の穏やかに晴れ渡る午後に、息子二人と私の三人で、御殿場にある「とらや工房」を訪れた。
目線を池のほとりで遊ぶ息子たちから建物の軒先へ向けると、仕事で付き合いのある男性が立っているのに気付いた。
よく見るとすぐそばのベンチに奥さんと思われる女性が座っている。
実は彼から先日、妻が癌で入院をしていると聞かされたばかりであった。
実際にはわからないが、ニットの帽子を深く被っていることで、抗癌剤による治療を連想してしまった。
声を掛けずにしばらく見ていると、男性は女性の隣にやさしく座った。
女性はゆっくりと、大きな背伸びをしながら、冬の日差しをたっぷりと浴び、男性は庭とその先にある太陽を、じっと見つめていた。
私が忙しなく動き回る息子たちと付き合っているうちに、夫婦は居なくなってしまった。
その後私は夫婦が座っていたベンチに腰掛け、同じように背伸びをし、庭先を見つめてみた。
私の目の前には、暖かな日差しと、庭で楽しそうに駆け回る息子たちが映る。
同じ日の、同じ軒下の、同じベンチに座る、別々の人間。
別々の人間に差す陽の光は、みな同じように暖かいのだろうか。


紅白の二輪の梅と二人の子

とらや工房断面図・スケッチ