時々弟と家の裏手の芝生でサッカーボールを蹴る。
幼稚園に入る頃から何となく独りでボールを蹴り始め、小学校のサッカーチームに所属したことで私のサッカー人生が始まった。
野球好きのおじからもらったグローブは全く使われず、毎日夢中でボールを蹴っていた。そして気がついたら中学三年の六月に過度の練習の為、体が悲鳴を上げてしまった。一年半走れなくなった。
高校や大学でもサッカーは断続的に私の周囲に存在していたが、中学までの情熱は嘘の様に冷めていた。
当時何故あれほどサッカーに熱中していたのか。実は、試合よりチームでの練習より、私は独りでボールを蹴っている時間が好きであった。
私はチームが同じ目標を共有する事以上に、私とボールだけの、自由にイメージが広がっていく感覚を求めていた。ただ、それが結果的にチームの勝利というものにかろうじて繋がっている事は、とても重要であった気がする。
しばらく忘れていたその楽しみは、今では建築というものに取って代わった。
それは、建築が皆と共感を得なければつくれないものであるにもかかわらず、自己の内側へ籠り、自由にイメージを膨らませることができるという、以前と同じ喜びを感じられるからかも知れない。
しかしかつてのように、走り過ぎて体が悲鳴を上げてしまう事だけは、繰り返したくない。
そのためには、過去に放り投げてしまったグローブをつけて、誰かとキャッチボールを始めるのが良いように思う。