2009/09/28

カトマンズの寺院

北沢ハウス

秋茄子も食べずに遊ぶ子供かな

小津安二郎

綺麗な夜明けだった。
今日も暑うなるぞ。
_____「東京物語」より

姉と甥

先週から、姉と甥が我が家に滞在している。
甥は今年の10月25日で満2歳になる。
身内の色眼鏡なしでも、甥は可愛い。
本当にいつ見ても可愛いのであるが、これまで家族が撮った写真を並べてみて、この2年足らずで顔も体も、日々変化しているのに驚いた。そしてきっと心も同様であろう。
この変化は連続して甥を見つめていると気付かないが、過去の写真のように一定期間の隔たりがあるとよくわかるのである。
ところで、「線」の定義は、位置及び長さをもつが、幅及び厚さをもたない、無限な点の集合であるという。
甥の可愛いという「線」も、幅や厚さのない、点の集合なのだろうか。
写真を見ると、そうかもしれないと思わされる。
今の甥が好きなものは次の通りである。
母である私の姉。祖父母である私の父と母。曾祖母である私の祖母。家で飼っている二匹の金魚。台所の換気扇。車。ご飯。ボール。
これらは現在の甥の好みを示すいくつかの点である。
姉と甥が義兄のところへ帰るまでに、私も甥にとっての一つの点になれたらと思う。

2009/09/21

国立代々木総合競技場

コスモス

畑聰一

キクラデスに共存的環境が在ることと、東京がキクラデス的環境で埋めつくされることとはあるいは紙一重の差異であるかも知れない。

原宿駅前の歩道橋

日曜日の十時前にJR原宿駅前の歩道橋から、明治神宮の大きな杜と国立代々木屋内総合競技場、そして表参道を眺めていた。
私と違って自分の立てたスケジュールをきっちりとこなす彼は、きっと待ち合わせ時間に遅れることはない。
「彼」とは大学時代からの付き合いで、大学へ入学した最初のガイダンスの時に初めて出会ったと記憶している。
私自身の設計よりも彼の設計した作品の方が頭の中に残っていると言えば、私における彼の影響がいかに大きいかわかるであろう。
しかしこれまでの6年間、私と彼はいつも一緒にいたわけではなかった。むしろ歩いてきた方向は違っていたような気がする。
学部の卒業旅行で彼とアメリカを横断した時も、移動のバスの中ではいつも離れて座っていた。それぞれ反対の窓から、違う景色を眺めていた。
そんな彼には「ケンジ」と「サトシ」という二つの名前がある。
彼は生れる前から「賢司」と名付けられていたが、生まれた顔を見て両親が漢字をそのままに「サトシ」という読みへと変えてしまったらしい。その出来事が今の彼を創ってしまった。
彼には「ケンジ」という「論理的」な部分と、「サトシ」という「非論理的」な部分が同居していると、私は思っている。
数か月ぶりに見た彼の顔は、あの頃のままだった。

秋分に異国の蜥蜴ビール飲み

2009/09/14

厳島神社

南の家

アルフォンソ・キュアロン

別れ際 彼女はテノッチとフリオに言った
「人生は波のようなもの 流れに身を任せて」
_____「天国の口、終わりの楽園」より

球面と平面

私たちが住んでいる場所は、地球である。
その名の通り、私たちの住んでいる場所の地面は「球面」なのである。
しかし、私たちの住まいの設計図は平らな「平面」として描かれる。
それでは実際の建築は、一体「球面」と「平面」のどちらに建っているのであろうか。
それともそのどちらでもないのであろうか。
ただ、私はこの「球面」と「平面」という差異を認識しなければ、真の「建築」へとにじり寄ることは不可能であると思っている。

柿の実とコスモスの花膨よかに

2009/09/07

ポルトの街並み

ツユクサ

柳宗悦

国民はおのおの歴史的地理的環境によって、その特質を持つものである。
印度の「智」、支那の「行」、日本の「眼」は東洋の三大輝きである。
だから印度人は思索にたけ、支那人は実行に優れ、日本人は鑑賞にたける。
_____「茶と美」より

地鎮祭

9月11日に私が配属となった建設現場の地鎮祭が行われた。
この現場は私にとって感慨の深い現場である。
しかしここではその「感慨」を語らずに、地鎮祭の式次第という「形式」のみを記録しておく。
地鎮祭の流れは以下の通りである。
1.修祓(しゅばつ):祭に先立ち、参列者・お供え物を祓い清める儀式。
2.降神(こうしん):祭壇に立てた神籬に、その土地の神・地域の氏神を迎える儀式。神職が「オオ~」と声を発して降臨を告げる。
3.献饌(けんせん):神に祭壇のお供え物を食べていただく儀式。酒と水の蓋を取る。
4.祝詞奏上(のりとそうじょう):その土地に建物を建てることを神に告げ、以後の工事の安全を祈る旨の祝詞を奏上する。
5.四方祓(しほうはらい):土地の四隅をお祓いをし、清める。
6.地鎮(じちん):刈初(かりそめ)、穿初(うがちぞめ)、鍬入(くわいれ)等が行われる。設計・施工・建主がそれぞれを担当する。
7.玉串奉奠(たまぐしほうてん):神前に玉串を奉り拝礼する。玉串とは、榊に紙垂を付けたもの。
8.撤饌(てっせん):酒と水の蓋を閉じお供え物を下げる。
9.昇神(しょうしん):神籬に降りていた神をもとの御座所に送る儀式。
この日の気温は高かったが、ススキの穂と、黄色いコスモスが秋の到来を感じさせ、神職の方の仕草が際立つ、凛とした地鎮祭であった。

朝霧が惑わし魅せるは月か日か