2009/05/18

恩師

週末に大学の恩師と会うため、新百合ケ丘の自邸を訪ねることになっている。

恩師は建築家であり、フィールドワーカーである。
大学四年から大学院を卒業するまでの三年間、私は恩師と対話を、文字通りの言葉と言葉による対話を、あまりしてこなかった。
その理由は対話の相手が常に研究対象そのものであったからだと、自分には言い聞かせている。しかし実際は私が恩師と対話する言葉を持っていなかったからであろう。
そんな仲ではあったが、これまでに私は恩師から幾つかの言葉を頂いた。それはこんな言葉であった。
「近代化は不可逆である」「設計に正解はない」「環境が人を変える」
また私個人に対して恩師はこのように評された。
「君は大正時代の子供である」「君は観念的である」「君は労働の分配が出来ない」
そして卒業時に恩師が私に与えてくれた言葉は、「自己と他者のあいだ」であった。
これらの言葉には、恩師と私とその関係と研究室での三年間が、濃密に圧縮されているように感じる。
次に会うときは私から恩師へ、言葉を贈ろうと思う。そしてそこから対話が、穏やかに始まっていくことを願っている。