2009/04/06
仏壇
朝、父は仏壇の前に立ち、二本の蝋燭に灯を点け、線香を一本立て、鈴を三度鳴らして手を合わせる。
祖父が亡くなり家族で故郷へ戻って以来、それは毎朝行われる。
仏間と居間が続き間になっているため、私はいつも隣の居間で朝食を摂りながら、障子越しに鈴の音と微かな線香の香りを感じてきた。
しかし私がそれを意識するようになったのは、長らく故郷を離れてからのことである。
再び私が家族と食卓を囲むようになったある朝、父は仏壇の前に立ち、二本の蝋燭に灯を点け、線香を一本立て、鈴を三度鳴らして手を合わせた。
するとその鈴の音が私の内奥まで響き、手を合わせる時間が永遠にも感じられたのである。
この一些事の中で変わらずに在るのは、仏間と居間と、何であろうか。