雨模様の日曜日、新宿駅から小田急線の最後尾の車両に乗っていた。
そこへ韓国人と思われる家族が乗車しているのに気づいた。
服装の雰囲気と、話している言葉、そして箱根観光のパンフレットに記載されているハングルの文字が何よりの証拠である。
父、母、姉、妹と叔母らしき5人は、最初全員立っていたが、席が空く度に順番に座っていった。
最初に座ったのは父である。娘の鞄を膝に載せてあげている。次に隣の2席が空き、母と叔母が座る。その後一人の日本人を挟んで姉が座り、父の向かいの席に妹が座る。それから妹の隣へ姉が移り、さらに姉妹で端の席へ移動し、最終的には5人全員が一列に並んで座った。
辺見庸の著書「もの食う人びと」に、儒教の食事作法は「先食後已(先に食し後に已むなり)」だと書かれている。客がいるなら主人側が、親子なら子の方が、先に箸をつけるのが礼儀であると。また、熱すぎないか冷たくないか、腐っているか毒などないか自らの口でチェックしたうえで「どうぞ」と食事を勧め、客や親が満足して箸を置くのを見届けてから主人や子が食事を終える。これが主人の客への礼であり、子の親への孝なのだとも書かれている。
食事の際の座席の配置や序列などについてはその本ではわからないが、この韓国に伝わる儒教の食事作法と、私が見た韓国人家族の一連の所作との関連性は、日本人との比較なども含めて、興味が尽きないように思われる。