8月末から新しい携帯電話を使用している。
中学三年から高校一年になる春休みに初めて携帯電話を持った時の感情はもう忘れてしまった。
私はこれまでに6台の携帯電話を使用してきた。どの機種にも愛着を持っていたが、計算すると2年に一度のペースで機種変更してきたことになる。
1台目はデザイン・機能性ともに良いモノではなかった。当時は何より携帯電話というツールを手にした喜びで一杯だった気がする。
携帯電話を持つ喜びに慣れた2台目以降から、私なりに気に入ったデザインの機種を使用したいという欲が出てきた。
中でも5台目の機種には愛着があり、それは当時最も小型な機種であった。これ以上小さくすることは出来ないだろうという限界点に、私は美しさを感じ、小さな画面と小さなボタンに身体が馴れるのを楽しんでいた。
そんなお気に入りの機種とは、携帯電話会社の都合という外的要因により突然別れることとなった。
そんな外的要因がそうさせたのか、私は現在使用している機種をこれまで意識していたデザイン性など全く考慮せずに購入してしまった。
さらにサイズも以前の倍程になり、私の身体感覚と美的感覚は完全に狂ってしまった。
そんな望まれない出会い方をした不幸な機種であったが、今ではその大きさにすっかり馴れてしまい、以前の携帯電話のボタンは小さすぎてとても押しづらいと感じる自分に最近気づいた。そして愛着も少しづつ芽生えてきている。
モノと身体と感情の複雑な因果関係は、こんなところにも現れるのである。