毎朝7時前に母親の母校である中学校へ通っている。
そこは今私が関わっている建築現場である。
現場事務所の鍵を開けるため階段を上ろうとすると、うつむき加減の私の頭に大きなクモの巣が絡みついた。
またやってしまったと思っても時は既に遅い。私はいつもこの瞬間にクモの巣の存在に気づかされるのである。
このクモの巣はなかなかのくせ者で、連日巣を張っている時と、数日間巣を張らない時がある。その不規則なリズムは何か私に不吉な暗示をもたらしているのではないか。そんなことを考えるようになった。
それにしても、毎朝私に取り払われてしまうにもかかわらず、どうしてこのクモは毎回同じ階段の上がり口に巣を張るのであろうか。
まさか私を捕らえようとしているわけではあるまい。
そうなるとやはり、私に何かを伝えようとしているとしか考えられないが、それはクモ本人に聞かなければ永遠にわからないだろう。
ただひとつわかっていることは、この私とクモの不思議な関係を知る人は誰もいないということである。