12月に入ってから、少しずつ自分の部屋の大掃除を始めていた。大掃除といっても、作業の大半は部屋にある本を選別するという作業である。大学を卒業して実家に戻り、元々妹が使用していた部屋に移ることになった私は、本に囲まれるような部屋を作り楽しんでいた。しかしその後社会人になり、日々疲れた体で床につき、朝日の差さないうちに家を出る生活が始まると、私の中の何かが確実に摩耗していくのを感じるようになった。
朝起きて、目の前に広がる本棚を眺めても、あの頃の興奮が蘇って来ないのである。
学生時代に私が築いてきたものと、社会で向き合っているものに、何か圧倒的な断絶を感じたのである。
この断絶に橋を架ける為に私は、本当に必要な本だけに囲まれなければいけないと直感した。
整理して私の本は最終的に全体の四分の一ほどになった。
部屋が軽くなるにつれて、次第に心も軽くなっていったが、部屋に置かれているその他のモノまで移動させたせいで、時々仕事の荷物の忘れ物をしてしまうという代償を負ってしまった。
モノに振り回される生活は、もうしばらく続きそうである。