2012/12/22

坂口安吾

私は「家」というものが子供の時から恐ろしかった。それは雪国の旧家というものが特別陰鬱な建築で、どの部屋も薄暗く、部屋と部屋の区劃が不明確で、迷園の如く陰気でだだっ広く、冷たさと空虚と未来への絶望と呪詛のごときものが漂っているように感じられる。
_____「石の思い」より