2011年7月2日土曜日の夕方、家からコンビニへ向かっていると、隣の家に住む8歳のナツキとそのお母さん、妹のアヤカとすれ違った。
するとその時ナツキに「あ、おじさんだ」と呼ばれた。
つい最近までは「ゆうたろうくん」とか「ゆうたろうお兄ちゃん」などと呼んでくれていたはずである。
どうやらある時から、彼女にとって私は「お兄ちゃん」から「おじさん」へと変わったらしい。
フランツ・カフカの小説「変身」では、主人公グレーゴル・ザムザが、ある日巨大な虫に変身してしまう。
小説のタイトルどおり「変身」するのは間違いなく主人公のグレーゴル・ザムザなのだが、実はザムザ自身は何も変わっていないと、私は考えている。
彼は小説の最後まで、虫に変身する前のグレーゴル・ザムザそのものであった。
むしろ変わったのはザムザの周りにいる人達である。
その小説の終盤に、以下のような記述がある。
「ザムザ夫妻(グレーゴルの両親)は、しだいに生きいきとして行く娘のようすを見て、娘がこの日ごろ顔色をわるくしたほどの心配苦労にもかかわらず、美しい豊麗な女に成長しているのにふたりはほとんど同時に気がついた。」
私にはこの文章にこそ人間の「変身」の瞬間が描かれているように思われる。