今から半年以上前のことだが、2010年4月11 日の日曜日に、学生時代に目黒でルームシェアをしていた友人夫妻と御殿場で会った。
私は昼過ぎに沼津の予備校での勉強を終え、急いで御殿場線に飛び乗った。
電車の中で、私は友人夫妻に対して笑顔が見せられるか不安になっていた。
日々何かに追われている感覚。その感覚に襲われている私の姿を見られるのが怖かったのである。
三時過ぎに友人夫妻と御殿場駅で合流し、そのまま彼らのレンタカーで内藤廣設計の「とらや工房」という茶屋でゆったりとした時間を過ごす。風の抜ける静かな空間の中で、どことなくぎこちなさを感じたのは私だけであろうか。
そこで時間を潰し過ぎたため、隣にある吉田五十八設計の、岸信介元首相の東山 旧岸邸は外観を眺めただけですぐに去ることになった。
その後箱根へ向かう途中にある風車のついたレストランから御殿場市街と雲で覆われた富士山を見下ろした。
どんよりとした曇り空と、その下に広がる街並みが、今の私の心情を映し出しているようで、さらにそれを友人夫妻に見抜かれるようで、なんだかすぐに去りたい心地になっていた。
美しい富士山の姿を見せられないまま、最後に私の家へ招待し、庭を一回りした後、居間で寿司を食べた。
食後三鷹へ帰る友人夫妻を庭先で見送り、居間へ戻った私は、笑顔でもてなし切れなかった自分に後悔した。
あれから友人夫妻と直接連絡を取ることは少ないが、彼は一級建築士試験の勉強に、新しく家族になった子供の世話と、忙しい日々を送っていることだろう。
しかし、彼の相変わらず世界を肯定し続けるウェブログを読むたび、決して弱い部分を見せず、常に笑顔でいることの大切さを知るのである。